Twitter まぐり Magriha | まぐり (@Magriha) のツイート

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瞬きをする度に枝野の顔が近付いてきた。鼻先が触れた。枝野の切れ長の目が僕を映し、そして、瞑した。言葉を発している途中だったから、易々と口腔を侵入され粘膜を掻き回される。
「ふ……、っ……んんっ」
枝野の手が後頭部と背に回り上半身をベッドに引き寄せられる。僕は枝野の胸に手をついた。

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枝野の冷却シートを手のひらで覆った。布一枚を通して枝野の体温が伝わる。
「でももうぬるいよ」
返事がないと思ったら枝野が僕の顔をまじまじ見つめていた。
「テルさんも貼ってたんですね」
「熱を移されちゃったかもしれないな」
僕は苦笑した。
「確実に移していいですか?」
「え?」

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僕はベッドの側のパイプ椅子に腰を掛けた。
「冷却シート持ってきたよ。貼ってやるからこっち向いて」
「……はい」
汗で額に張り付いた髪を手の甲で払い、冷却シートを貼った。貼った瞬間、枝野が強く瞑目するのが面白かった。
「あはは、そんなに冷たい?」
「冷たいですよ」

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い自分に自信を持った口ぶりだからよけいに響く。僕は枝野の元に戻った。枝野が穏やかに微笑んできた。そんな顔が出来るようになったんだな。一瞥して背を向け、左右の帳を中央に引き、隙間をなくす。陽光を遮断し中に冷たい空気を閉じ込めた。
「どうしました?」
枝野が怪訝そうな声を上げた。

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。これじゃどっちが格好が悪いか分からないじゃないか。僕はベッドを離れ、冷蔵庫から冷却シートを二枚取り出した。その内一枚の透明シートを剥がして自分の額に貼った。枝野とここで話し始めてから奴の意図しない発言で顔が火照る。心情を推敲せず生の素材のままぶつけてくる上に、嘘偽りを感じさせな

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あった枕や備品を素手で投げた。コントロールが悪く枝野には一つも当たらなかった。散らばった物の中から枕を拾って枝野は胸に抱いた。
「テルさん。俺すげー嬉しいんですよ。だって今日が初めてじゃないですか? 俺にこんなに気遣ってくれるの」
「気まぐれだよ。いちいち気に留めるな」
馬鹿だな

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いつもはそんなに素直じゃないのに」
「う、うるさい! 別に帰ってもいいんだ。だけど、昨日約束したから……!」
「テルさん声大きいですよ! 分かりましたから! もう茶化しませんよ」
「そうだよ。人の厚意は黙って受け取れ」
「こうい? 好きって事っスか!?」
「寝ろばか!」
僕は側に

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枝野が倒れた。
「ひどいじゃないですか。いきなり投げるなんて」
「お前にはちょうどいい刺激だ。まったく……少し眠りなよ。僕はかえ――」
僕はどうしよう? 一人で帰ったら反故になるしそれは避けたい。
「……目が覚めるまで一緒にいてやるから」
「テルさんこそ具合悪いんじゃないですか

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「すみません……」
それから保健室に着くまで言葉を交わす事はなかった。
「失礼します。先生、少し休ませ――いないね」
「そうッスね」
「……お前なんかまた息上がってないか?」
「き、気のせいですよ!!」
「っばか、耳元で叫ぶな!」
枝野をベッドに放り投げた。みっともない声を上げ

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先生は面倒事が嫌いなようで僕がそう申し出ると枝野を難なくこちらに引き渡した。面白半分で見ていた聴衆も枝野の鏃のような睥睨で霧散した。枝野はまだまっすぐ歩けないようだったので肩を貸してゆっくりと廊下を歩いた。
「まったくしようがないな。こんな所を他校生に見られたら面子が立たないよ」

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それから五分くらい言い争っているとトイレの外にギャラリーが出来ていた。騒ぎを聞きつけた先生がやって来て枝野は強制的に退室させられた。周囲に見世物じゃねえ、とがなっていたけどやや前屈みだったので怖くなかった。さて。
「先生。先輩は具合が悪いそうなので僕が保健室に連れていきますよ」

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そうだよな。僕と約束したからな。
「まあいいけどさ、出られる?」
枝野はがっくりとうなだれ頭を左右に振った。
「出られません。というか立てません」
「大丈夫じゃないじゃん。肩貸すよ」
バッと顔を上げて、
「いやそれはたっちゃいそうなんで駄目です!」
「いや立ってほしいんだけど」

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荒い呼吸を繰り返していた。額やこめかみに流汗がみられ、頬は紅潮していた。
「て、テルさん……ちょっと、そんなにじろじろ見ないで下さい」
「はあ? いや、見るよ。だって普通じゃないし……大丈夫か? どうしたんだよ。そんなに汗かいて。まさかまた喧嘩を」
「してません、それは!」

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「枝野、枝野。具合でも悪いのか?」
ノックと共にそう呼び掛ける。何かを引き上げるような衣擦れがして、金属がカチャカチャとこすれる音がした。ベルトを締めたのか? ややして扉の鍵が外された。個室がやおら開いた。そこには確かに枝野がいた。
「どうしたんだ一体……」
枝野は便座の蓋に座り

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組み合わせは悪意ある噂好きの大好物だ。と、一般人なら自身の立場を危惧して声を掛けるのをやめるだろう。僕は個室の扉の前に立った。
「枝野。そこにいるんだろう」
二、三回ノックをする。中の枝野が明らかに動揺したのが分かった。気、というのだろうか。一緒に過ごす内に期せずして習得した。

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埋まっていた。枝野だろうか。
「えだ――」
無意識に言いかけて自分の等閑さに気付き口を噤んだ。もし枝野ではなかったらどうしよう。他の個室が空いているのに特定の個室に声を掛けた変態になってしまうのでないだろうか。冷や汗が背中に伝った。何度も言うが噂が広まるの早い。優等生と変態という

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もしかしたら具合が悪くなったのかもしれない。とりあえずトイレに向かう事にした。前日に約束した以上、今日は枝野と下校しなければいけない。僕は約束を破る人間が嫌いだ。女子トイレは絶対にいない。いない事を願う。僕は男子トイレに足を踏み入れた。見た感じ利用者はいなかった。しかし奥の個室が

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手を振ってきた。僕は手を振り返し、枝野を探した。いない。というか僕達とジャンルが異なる風貌なので二年に混じっていたら一瞬で分かる。隣の教室にもいなかった。準備室にも。二年のフロアで探していない場所となると――、
「……トイレ、か」
気乗りしなかったが行くしかなかった。

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クラス委員のような風貌の女が親切に枝野の行方を教えてくれたので礼を言い、三年の教室を後にした。階段を下りた。枝野は二年生の教室に向かったらしい。早い話がすれ違いだ。でも僕は枝野と鉢合わせしなかったけどな。疑問を抱きながらまた二年の教室に戻った。談笑に興じていた女子達が僕に気付き

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僕が枝野の教室を訪ねるのは日常になっていた。三年生の教室は最上階にあるので僕の教室より風景がよく見える。橙色に焼けた空を見遣りながら戸を開けた。すぐに中へ視線を転じ枝野、と呼んでみた。教室の空気が一瞬で張り詰めたのを肌で感じた。
「すみません、急に。枝野先輩知りませんか?」

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放課後一緒に帰ると約束していたので枝野の教室へ向かった。すれ違う上級生達が怪訝そうな顔で僕を眺める。二年生が三年生の教室に入り浸っているとそれだけで噂が立ってしまう。ましてやそれが校内一の不良と校内一の優等生だとよけいに。先輩達に笑むと男女問わず少し焦ったように顔を下に俯けた。