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その手を取りながら、僕も家系図に空いた穴になるのだと思った。若者の手は絹のように滑らかだった。

それが僕の家を訪れたのは、着物が出来上がった数日後の夜だった。扉の外に立っていた薄着の若者の肩に、僕は着物をそっとかけてやった。若者は目を細めると、桑の葉より重いものはとても持てそうにない手を僕に差し出した。

ある年、僕はある蚕をひどく気に入ってしまった。それは特別に大きく、美しく、そして僕になついているようだった。僕はそれを可愛がり、美味しそうな桑の葉を与え、立派に育て上げた。そしてそれが繭を作ったとき、僕はその繭からとった糸を織り込んで白無垢を作った。

大人になって僕は家を継いだ。蚕は無力でかわいい生き物だ。僕がいなくては生き延びることすらできない。そんな蚕を育て、繭を作ったところで茹で殺してしまう。仕事とはいえ毎回ひどく胸が痛んだ。

この人はどうなったのと聞くと大人たちは「蚕を娶ってしまった」とだけ教えてくれた。僕にはその意味がずっとわからなかった。

僕の家は代々蚕を養殖している。かつてはお上にも繋がりがあったというくらい由緒正しい家なので、立派な家系図も残っている。何度か見せてもらったことがあったが、その中にいくつかポツリと姿を消している人の名前があった。それこそ蚕が食べた桑の葉みたいに、家系図に穴が空いている。